
「野球の動作は、全身を使う」。野球に関わっていたことのある方なら、これは、当然のことと感じられるでしょう。でも、実際にプレーしている立場では、自覚を持つことはとても難しいことなのです。ある調査では、投げる側と反対の手関節の動きを固定させ、遠投させると5〜7m遠投距離が短くなったと報告しています。つまり、場合によっては硬すぎたり、柔らかすぎたりと言った、グローブの硬さが合わないだけでもパフォーマンスが変化してしまうかもしれないと言うことなのです。
でも、プレーしている選手は何が原因で、パフォーマンスが低下しているかなど自覚できません。一昔前は、1に練習、2に練習でした。そして近年では、1に強化、2に強化。どれも間違っていませんが、と言うより、どちらも大切な対応であるはずなのに的がずれていたら、それはとてももったいないことになります。ましてや、カラダはいつも変化しているもの。環境などの外的因子や、疲労などの内的因子の影響により、何をすることが最もその身体に適しているか、その理由により異なってくるものなのです。
また、天然芝であっても、芝の手入れ、刈り込み方によっては、芝目が生じ足部の芝目に準じて、意識しない運動が強制されていることが多いものです。特定の方向で、ランニングなどを行う場合は、繰り返し受動的な運動が繰り返されることになり、傾斜同様、身体活動の繰り返される非対称性を生み、結果として身体機能の阻害となってしまうものです。このような観点からみても、環境によっては身体機能への不均衡なストレスを生じていることもあり、身体活動の場所に応じ、繰り返し引き起こされる負担、影響の対応を図る必要があるのです。また、傾斜や芝目だけでなく、身体活動を行う場所の硬さも、2次的にではありますが身体機能に強く影響を及ぼします。硬い場所での身体活動は、主として、足部周辺の過活動が認められ、足部周囲が疲れやすく、下肢機能の阻害が生じやすくなります。これに対し、柔らかい場所での活動は、むしろ股関節周囲の過活動を招きやすく、硬い場所での活動時の特徴とは違った下肢機能の阻害が確認されます。いずれにしても、柔らかさを損なう下肢機能の阻害は、骨盤帯を含めた体幹機能への負担を生み、身体機能の疲労を誘発することになるのです。

内的因子である身体各部の機能障害は、環境などによる外的因子からの影響が誘因となることも多いものですが、継続される運動による疲労や、競技特性による特徴的な疲労により阻害されることも多いようです。これまでの調査で、社会人野球チームのメディカルチェックを行ったところ、約9割の選手に、股関節の運動制限を認めました。野球での投球動作は、他の競技と同様に股関節の動きは非常に重要で、股関節の運動制限は、姿勢保持、エネルギー伝達を阻害することに繋がってしまいます。このような状態は如何に他の機能を高めても、その機能を発揮することができないだけでなく、姿勢保持、そしてエネルギー伝達を体幹機能で補おうと、他の関節に過剰な負担を強いることも多く、その結果、いろいろな障害を引き起こしてしまうこともあるのです。これらの現象は、股関節に限ったことではなく、足部、足関節からの影響も同様にして起こり得ることなのです。
また、身体各部の疲労は、下肢からだけとは限らず、上肢からの影響も強く受けます。特に、肩甲帯を含めた肩周囲の機能は、捕る、打つ、投げると言った、効果器としての機能の他、体を支える支持として、あるいは衝撃を緩衝するために、さらに、カラダを移動させるための推進力、姿勢保持のためのバランスを保つための重要な機能も果たしているのです。つまり、その部分が疲労を起こしても結果としてパフォーマンスの低下を招くことになるのです。それも厄介なことに、本当に疲労と感ずるときは、もう時すでに遅し、ではありませんが、かなりパフォーマンスが崩されていると考えなくてはなりません。
時代は、「適時適選」。いつも同じことだけをしていれば良いのではなく、その時に、最もすべきことの選択が大切な時代となってきました。でも、残念ながら、自分自身で、それを決めることは非常に難しく、むしろ、今、どのような状態になっているかを見極めることが難しいのが現状です。このベースボールコンディショニングは、治療ではありませんが、「何となく調子の悪さを感ずる」、「どうも、練習効果が期待にそぐわない」、「特別な問題はないが、今後を踏まえ、何をすべきか決めたい」などの時に、専門的な評価で今の状態を明らかにし、自分で気付けなかったカラダの変化に気づいていただき、その時その時の最適な状態に整え、それを維持して行くためのアドバイスをいたします。

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